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木挽町月光夜咄
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そしてこう思った。
もし、天才に何かしら秘密があるとしたら、それはやはり「歩く」ことだろう。
タクシーで移動していたら、あんなふうに路地裏の風景と睦み合えない。
(歩け歩け:p53)
即興的に、と明記しなくても、基本的に文章を書くことは即興的で、書くことの面白さは、即興的な態度で臨んだときに、はたしてどんな言葉やイメージが引き起こされるかを、驚いたり呆れたり感心したりすることに尽きる。
(本棚:p187)
信号が変わり、ランナーたちがいっせいに走り出した。
声や息が右と左に分かれてゆく。
「タフになれるかもしれない」と誰かの声が聞こえた。「なれるなれる」と誰かが答えた。ランナー同士の会話であったか、それとも、信号待ちをしていた中学生と思しき少年たちだったか。
「なれるかもね」と小さな声で自分にも言う。(木挽町へ:p247)
筑摩書房 紹介文より
木挽町という町があって、そこに曾祖父が営む鮨屋があった。幻の店を探すうち、過去と現在がひとつになってゆく。著者初のエッセイ集。解説 坪内祐三
【目次】
左利き
黒いうわっぱり
一行アキ
改行なし
歩け歩け
逃げろ逃げろ
一九七二年のラジカセ
舞台袖
玉手箱
十二時三十四分〔ほか〕
【状態】
初版/帯付き/良好
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